こどもの食物アレルギー

こどもの食物アレルギーについて

ここでは、お子さまの食物アレルギーを中心に、今日から使える正しい知識をご紹介していきます。
乳児では、約10%に食物アレルギーがみられるとされています。
楽しい食生活をおくれるように、3つの大事なポイントをおさえましょう。

食物除去は、医師の指導のもと必要最小限に!

食物アレルギーの診断は、熟練した小児アレルギーの専門医ですら、とても難しいです。
「念のため」「心配だから」という理由で、本当は食べられる食物を除去しないようにしましょう。
少しは食べられるのに、心配だからまったく食べないというケースがありますが、子どものこれからの生活を考えて食べさせてあげましょう。

食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎

生後3ヶ月頃までに、顔から全身にひろがるような湿疹(しっしん)がでることがあります。
近年、乳児の湿疹と食物アレルギーの関連が指摘されています。

湿疹の治りが良くないときは離乳食をはじめる前に病院へ

過敏になる必要はありませんが、顔や全身の湿疹がなかなか良くならない場合、食物アレルギーのリスクがあるかもしれません。
最も多い乳児の食物アレルギーの原因は、「鶏卵」、「牛乳」、「小麦」が大半をしめます。
医師に相談してから離乳食をはじめるのがよいでしょう。

いよいよ離乳食開始!なかなか湿疹がよくなりませんがどうすればよいですか?

病院を受診して、お子さまの湿疹がスキンケアステロイド外用で良くならないときは、食物アレルギーの可能性を考えていきます。
ここからは、下の図にそって話をすすめていきます。

食物アレルギー診療ガイドライン2017より一部改変

アレルギー検査

まず、くわしくお話をうかがってから、必要に応じて血液や皮膚のアレルギー検査を行います。

当院では、6歳未満のお子さまには、原則としてアレルギーの血液検査は行っておりません。
どのくらいの量まで食べられるのか、いつになったら食べられるようになるのか、といった重要な判断をする際の参考にならないためです。
また、アレルギーの血液検査が陽性に出たために、今まで食べられていた食べ物をやめてしまうことは、お子さまに不利益になってしまいます。
重度の食物アレルギーをお持ちのお子様は、設備の整った総合病院をご紹介いたします。
恐れ入りますが、何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。

食物除去試験

アレルギー検査の結果、疑われる食べ物が1つか2つだった場合は、医師の指導のもと、食物除去試験(1〜2週間食べさせないでみる)をします。
疑われる食べ物をやめたことで湿疹がよくなった場合は、母乳を通して負荷試験を行って、母乳中のアレルゲンの関与がないかの確認を行うことがあります。

食物経口負荷試験

いよいよ疑わしくなってくると、食物アレルギー診断の基本である食物経口負荷試験を検討します(専門の施設にて)。
アレルギーが疑われる食べ物を少しずつ食べさせて、アレルギー症状がでないかチェックする、というテストです。

いくつかのステップがあり、難しいですよね。
こちらは食物アレルギー診断までの流れを分かりやすくしたもので、実際にはさらに複雑なものです。
知っていただきたいこととして、血液のアレルギー検査は、食物経口負荷試験の結果が陽性(食べられない)となる確率を事前に推測する、あくまでサポート的なものにすぎない、ということです。
食物経口負荷試験の目的は、「何を食べたらダメか」という犯人さがしだけではありません。
アレルギーを起こす食物であっても、どれくらいの量まで安全に食べられるのか、がわかります。
結果が陽性になっても、食物アレルギーは年齢とともに良くなることが多いため、半年〜1年後くらいに再度検査を受けて、結果をみながら徐々に食物除去を軽くしていきます。

食物経口負荷試験は、アナフィラキシーなどに迅速かつ適切な対応がとれる設備が整った施設で、専門の医師のもと行うものです。
必要と判断した場合は、ご紹介いたします。なお、ご自分で試すことは大変危険ですので絶対にやめましょう。

食物アレルギーは治るのでしょうか?

乳幼児期に発症する主な原因食物(鶏卵、牛乳、小麦)や大豆は年齢とともに食べられるようになる傾向が強く、一般的に3歳までに50%6歳までに80-90%が食べられるようになります。
それ以外の原因食物は同じように耐性を獲得することが難しいので慎重に経過をみていく必要があります。

Ohtani K, et al. Allergol Int 2016; 65: 153-7.
Koike Y, et al. Int Arch Allergy Immunol 2018 in press

離乳食を遅らせない

アレルギーが心配だから食べる時期を遅らせる、というのは昔の話。
遅くしても食物アレルギーの予防にはならず、むしろ早いほうがアレルギーになりにくい、という報告もあります。
いろいろな食べ物を、早めに少しずつ食べさせていく、というのが最近の見解です。生後5〜6ヶ月頃から始めていきましょう。
また、妊娠中・授乳中のお母さんの食物除去は推奨されていません

スキンケアが優先!

アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの関係を知ろう

食物アレルギーのほとんどは乳児期(0歳児)に発症し、その多くは”食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎”とよばれるタイプです。
生後3〜4ヶ月以内に、顔から湿疹(しっしん)が出はじめ、体に広がっていきます。
湿疹やアトピー性皮膚炎のコントロールが難しい赤ちゃんは、離乳食でアレルギーを起こす可能性が高くなります。
お肌のバリア機能がさがることで、そこから食物のわずかな成分が入り、過剰な反応(アレルギー)がでるようになると考えられています。
早いうちからのスキンケアがとても大切です。石けんでやさしく洗って、しっかり保湿。
必要に応じてステロイド外用を使います。
厳密には、生後早めにはじめるスキンケアは、アトピー性皮膚炎を30~50%程度予防できるデータはありますが、食物アレルギーの発症予防効果は証明されていません(食物アレルギー診療ガイドライン2016 日本小児アレルギー学会)。

鶏卵アレルギーの予防について

生後6ヶ月までにお肌の状態をよくしてあげて、生後6ヶ月頃から微量の鶏卵を食べ始めるとよいでしょう。

PETIT スタディ、Lancet 2017; 389: 276-86.

具体的には、「固ゆで卵黄」や「できる限りよく加熱したいり卵」を使い、「ごはん粒の 10 分の1程度の大きさ」 から始めましょう。
お肌の状態がよくない場合は、医師に相談してから始めましょう。
くわしくは、日本小児アレルギー学会の「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」の解説をごらんください。

食物アレルギー Q & A

食物アレルギーの症状は何ですか?

皮膚のかゆみ・湿疹、口びる・まぶたの腫れなどが多いです。
即時型食物アレルギー”というタイプでは、多くは食後15分以内に症状が出ます。
症状が強くなると、腹痛・下痢、息苦しさがでてきて、まれにアナフィラキシーショックといって血圧が下がり命の危険におよぶ場合もあります。
食物依存性運動誘発アナフィラキシー”は、10〜20才代の男子に多くみられ、ある食べ物を食べたあとにすぐ運動をすることで、アレルギー症状がでるタイプです。
症状の進行がはやく、ショックに至るケースも多いため、その時はエピペン®をつかったり、救急車を呼んだり、素早い対応が必要です。
治療がおわったら、しっかり原因を調べましょう。
新生児・乳児消化管アレルギー”というタイプでは、生後まもなく、粉ミルクを飲ませると下痢や血便、嘔吐などがでることがあります。
医師の判断で、アレルギー用ミルクを使うこともあります。
1歳で半数以上、2歳で9割前後は治るといわれています(『食物アレルギー診療ガイドライン2016』日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会作成)。

どんな食べ物に気をつけたらよいですか?

鶏卵、牛乳、小麦は原因として多いですが、これらは将来食べられるようになることも多いです。
年齢によって原因食物は変わってきて、6歳以上の学童期では、エビ・カニなどの甲殻類、くだもの、魚などが新たに加わってきます。

食後にお口の中がムズムズ「口腔アレルギー症候群」

学童期(6歳〜)以降に多く発症するものとして、「口腔アレルギー症候群」があります。
「即時型(そくじがた)」とよばれるタイプの食物アレルギーで、多くは15分以内にアレルギー反応がでます。
くだものや生野菜を食べて、それがお口の中の粘膜にふれることで、口の中が腫れてムズムズ・舌がピリピリ・ノドがイガイガなるなどの症状がでます。
同時に鼻水、皮膚や目のかゆみ、腹痛、下痢などが現れることもあります。
まれにアナフィラキシーショックを起こすケースもあるので、注意が必要です。

花粉症の方は口腔アレルギーを知っておきましょう

花粉とくだものには共通した成分があるため、花粉症の方はお口の症状もでやすいことが知られています。
たとえば、
・スギ・ヒノキ — トマト
・ブタクサ・イネ — メロン、スイカ
・シラカンバ・ハンノキ — リンゴ、モモ、大豆、豆乳
ほか、キウイ、イチゴなど。

口腔アレルギー症候群の症状がでないようにするには

生で食べると症状がでやすいので、加熱・加工済みなら食べられます。
たとえば、熱を通したトマトのお料理、アップルパイ、モモの缶詰などです。豆乳がだめでも豆腐は大丈夫です。
花粉症の治療をしっかり行い、アトピー性皮膚炎がある方はその治療も重要です。
抗ヒスタミン薬を定期的に内服し、原因の食べ物を可能な範囲でさけるなど、生活にあわせた対策が必要です。
詳しくは医師とご相談ください。