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「痩せる薬」が保険診療で?!肥満症の新しいお薬

2024年2月27日更新

2023年3月、肥満治療薬として「ウゴービ皮下注」が厚生労働省に承認されました。
今回はそんな「ウゴービ皮下注」について詳細に解説いたします。

ウゴービ皮下注とは

「セマグルチド」という一般名で、GLP-1受容体作動薬に分類されます。糖尿病治療薬の「オゼンピック」や「リベルサス」と同じ成分です。聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

投与方法はオゼンピックと同じように週1回皮下注射します。0.25mg、0.5mg、1.0mg、1.7mg、2.4mgの5段階があり、0.25mgからスタートして4週ごとに増量していきます。

誰にでも処方可能?処方できる人は?

どなたにでも処方可能なわけではなく、下記の方に対して保険適応となり処方可能です。

高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。

●BMIが27以上で2つ以上の肥満に関連する健康障害*を有する
●BMIが35以上

*肥満に関連する健康障害:
 ・耐糖能障害 (2型糖尿病・耐糖能異常など)
 ・脂質異常症
 ・高血圧
 ・冠動脈疾患
 ・脳梗塞・一過性脳虚血発作
 ・非アルコール性脂肪性肝疾患
 ・月経異常・女性不妊
 ・閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
 ・運動器疾患 (変形性関節症:膝・股関節・手指関、変形性脊椎症)
 ・肥満関連腎臓病

BMI27やBMI35と言われてもよくわからない方もいらっしゃるかもしれませんので下記が目安の身長と体重です。
※BMIは次の式で算出可能です。BMI = 体重kg ÷ (身長m)2

■BMI27:肥満に関連する健康障害がある場合に保険適応になるライン

身長(cm)体重(kg)
15060.7
15564.8
16069.1
16573.5
17078.0
17582.6

■BMI35:高度肥満症で保険適応になるライン

身長(cm)体重(kg)
15078.7
15584.1
16089.6
16595.2
170101.1
175107.2

なぜ肥満に効果があるの?

ウゴービは「オゼンピック」や「リベルサス」と同様に、脳の満腹中枢に働きかけ、食欲を抑制することで体重減少効果が期待されます。
ちなみにウゴービと同じ皮下注射の「オゼンピック」との最大の違いは、その最大投与量です。
「オゼンピック」の最大投与量が1.0mgであったのに対して、ウゴービは最大2.4mgの投与が可能です。オゼンピックの最大2.4倍と考えると、その食欲抑制効果と胃の蠕動運動抑制効果による体重減少効果はかなり大きいことが予想されます。

ウゴービの効果が気になる

実際の効果が気になるところですが、日本人を含んだ東アジア人を対象とした臨床試験であるSTEP6試験では、投与後68週間後の体重が

ウゴービ2.4mg群でマイナス13.2%
ウゴービ1.7mg群でマイナス9.6%
プラセボ群でマイナス2.1%

という結果になっています。※対象患者は「ウゴービ」適応患者と同じです。
また、ウゴービ2.4mg群の83%、1.7mg群の72%で5%以上の体重減少を達成しています。比較対照のプラセボ群では21%でした。
13%の体重減少は体重80kgの人で10.4kgの減量となるので非常に大きな効果があると言えます。

副作用はあるの?

臨床試験の結果、ウゴービ2.4mgで86%、1.7mg群で82%、プラセボ群で79%に副作用が出現したとされています。
特に、嘔気、下痢、便秘などの胃腸障害が多く、ウゴービ2.4mg群で59%、1.7㎎群で64%、プラセボ群では30%といった結果でした。

さいごに

これまで「肥満症」に対する保険診療で使用可能な薬物は「サノレックス」や「防風通聖散」が主流でした。
しかしながら、「サノレックス」は「高度肥満症(肥満度が+70%以上又はBMIが35以上)」にしか使用できず、処方は3か月間までという期間の限定があり、また強い副作用が出る場合があり慎重に使う必要がありました。「防風通聖散」は副作用が少なく使用しやすい薬剤でしたが、体重減少効果に個人差が大きいことが問題でした。
今回の「ウゴービ皮下注」は長期間使用でき、効果が高い肥満症治療薬として期待ができそうです。

肥満症の方が体重を減らすことで生活習慣病の発症を予防したりすることができ、健康寿命の延伸にもプラスの効果が働きます。

「ウゴービ皮下注」の発売開始は未定です。処方可能になりましたら改めてホームページでもお知らせいたします。