咽頭結膜熱

咽頭結膜熱は、アデノウイルスによって引き起こされる感染症で、プール熱とも呼ばれています。感染力が強く、家庭内や学校・保育園など集団生活で広がりやすい特徴があります。乳幼児や高齢者は、重症化のリスクが高いため注意が必要です。咽頭結膜熱について、子どもと大人の症状の違い・感染対策・治療法・出席停止の目安などを大森町駅前内科小児科クリニックが解説します。当クリニックでは咽頭結膜熱の診療も行っておりますので、気になる症状があればお気軽にご相談ください。

咽頭結膜熱とはアデノウイルスによる感染症

咽頭結膜熱とは、アデノウイルスによる感染症です。複数の型が知られているアデノウイルスの中でも、咽頭結膜熱を引き起こすのは特に3型が多いとされています。

咽頭結膜熱は小児での感染が目立ちますが、大人にも感染するため家庭内感染に注意が必要です。

潜伏期間は5〜7日で、その後、発熱(38~39度)、のどの痛み、結膜炎などの症状が現れます。
かつてはプールでの感染が多く、「プール熱」と呼ばれていましたが、現在はタオルを共用することが減り、プールでの感染は少なくなっています。

咽頭結膜熱の流行時期は6月からで、7〜8月に流行のピークを迎えます。主に夏に流行しますが、最近の傾向として冬にも流行することがあります。

咽頭結膜熱の感染経路

咽頭結膜熱の原因であるアデノウイルスは、感染力が非常に強いウイルスです。咽頭結膜熱の主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。

感染経路内容
飛沫感染発症者の咳・くしゃみなどの飛沫を吸い込むことで感染する。
接触感染発症者と直接接触、またはタオル・ドアノブなど発症者が触ったものに触れた手で粘膜に触れることで感染する。

アデノウイルスは潜伏期間中から感染力があるので、気付かないうちに感染が広がってしまうケースもあります。

咽頭結膜熱の子どもと大人の症状

咽頭結膜熱にかかると、以下のような症状が現れます。

  • 高熱(39~40度)と微熱(37~38度台)を4〜5日ほど交互に繰り返す
  • 扁桃腺の腫れによる喉の痛み
  • 目の充血や目やに(結膜炎症状)
  • 頭痛・腹痛・下痢
  • 首のリンパ節の腫れ
  • 全身の倦怠感

子どもが咽頭結膜熱を発症した場合、ほとんどのケースで安静が必要になります。
一方で、大人が感染した場合も同様の症状が出ますが、子どもよりもやや軽症であることが多く、熱が出ないケースもあります。

高熱が続く場合はすぐに受診をしてください。特に、免疫機能が未発達な乳幼児や低下している高齢者は、重症化のリスクが高いため注意が必要です。
家庭内で子どもが感染すると、看病していた大人が感染するケースも多く、早めの対応と十分な予防が重要になります。

咽頭結膜熱の治療方法

咽頭結膜熱に特別な治療法はなく、症状に応じた対症療法が行われます。

鎮痛剤やステロイドによる治療

高熱には解熱薬、喉の痛みにはうがい薬や鎮痛薬を使用します。

目の症状が強い場合は眼科での治療が必要です。抗生剤やステロイドの点眼薬を使用して症状を抑えます。

水分補給・栄養摂取を行い安静に

発症後は安静にし、水分補給をしっかりと行うことが回復を早めるポイントです。

喉の痛みがある場合には、喉ごしがよく栄養を取れるもの(うどん・茶碗蒸し・ヨーグルト・牛乳など)を意識して食べましょう。

咽頭結膜熱の基本的な感染対策

咽頭結膜熱に有効なワクチンはありません。感染を防ぐためには、日常的な手洗い・うがいが基本です。
他にも、以下の感染対策を心掛けましょう。

感染対策内容
消毒咽頭結膜熱の予防には塩素系の消毒または煮沸が効果的です。消毒用アルコールは効果が低いと言われています。
道具の共有禁止タオルや洗面器は共有せず、個別に使うことが大切です。
プール後対応プールの後は必ずシャワーを浴びましょう。
顔触り禁止粘膜に触れることでも感染するため、目・鼻・口など顔を触らないように心掛けましょう。
流行期対応流行時期は人混みや感染者との密接な接触を避けましょう。
家庭内対策家庭内に感染者がいる場合は、マスクを着用・接触を最小限にすることも感染予防に役立ちます。

子どもが咽頭結膜熱に感染した際の対応方法

子どもが咽頭結膜熱に感染した場合は、まず医療機関を受診して診断を受けましょう。診断が確定したら、登園や登校は控え、家庭内でしっかりと休養させることが必要です。

高熱が4〜5日程度続くため、十分な水分補給と栄養摂取を意識し、脱水を防ぐよう注意してください。また、目の充血や目やにの症状が強い場合は、早めに眼科を受診しましょう。

家族内での二次感染を防ぐため、タオルは分けて使用し、手洗い・うがいを徹底しましょう。看病する大人もマスクを着用し、できるだけ感染予防に努めることが大切です。

症状が治まっても、約1ヶ月は尿や便からもアデノウイルスが排出されます。家庭内での感染を防ぐため、排泄物を適切に処理することも重要です。

咽頭結膜熱の出勤・出席停止について

咽頭結膜熱は学校保健安全法において第二種感染症に分類されており、症状が消失するまで出席停止の措置が必要です。

目の充血や発熱などの主な症状が消失して2日を経過するまでは、自宅での療養が求められます。

大人が感染した場合、法律上の出勤停止義務はありませんが、感染力が強いため、会社によっては出勤を控えるよう求められることがあります。体調が優れない場合は無理せず休み、職場での感染拡大を防ぐように努めましょう。