抗原検査・PCR検査・抗体検査 どう使い分ける?

日本臨床微生物学会、日本感染症学会、日本環境感染学会の3学会が、抗原検査・PCR検査・抗体検査の特徴と使い分けの方針を発表しました。

「新型コロナウイルス感染症に対する検査の考え方」http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_kensaguide_0526.pdf

こちらでは、どのような場合に使用するのが適切なのかを解説していきます。

まず、抗原検査とPCR検査は、どちらも「今」ウイルスに感染しているかを判定する検査です。
抗体検査は、「過去に」感染したことがあるか、を調べる検査です。

1. 抗原検査

抗原検査は、鼻やのどの奥の粘液を綿棒でとる方法で行われます。
インフルエンザの検査のようなイメージです。
短時間(30分ほど)で結果が出るのが特徴ですが、陽性の感度が低いことが難点です。つまり、抗原検査の結果、「陽性」であった場合は、信用(確定診断)できますが、「陰性」であった場合には、本当に陰性なのか分かりません。
そのため、抗原陰性でも新型コロナウイルス感染症を強く疑う場合には、遺伝子検査(PCR検査)の実施を考慮します。
抗原検査で陽性であった場合には、入院、宿泊施設、あるいは自宅待機が必要になります。

2. PCR検査

PCR検査は、ウイルス遺伝子の一部分を切り取り、増幅させることでウイルスが体内にいるかを判定する検査です。
これまでは、抗原検査と同じように、鼻やのどの奥の粘液を綿棒でとる方法で行われていましたが、検査時に咳やくしゃみをして、周囲に飛沫がとぶことから、様々なリスクを伴うことが問題視されてきました。
しかし、2020年6月2日、厚労省からの発表により、「唾液」から検体をとることが認められました。
この意義はとても大きく、より安全に簡単に検体を採取できます。
また以前より迅速に検査を行えるため、多くの人が受けられる可能性があります。
結果が出るまでに数日かかることが難点ですが、前述の抗原検査に比べ感度が高い点が優れています。
つまり、「PCR検査で陰性」であったときは、本当に「コロナ陰性」といえる確率が高い、ということになります。

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3. 抗体検査

抗体検査は、過去に新型コロナウイルスに感染したことがあるかを調べるための検査です。
抗体とは、体内にウイルスが侵入してきたときに、除去しようとするために免疫反応によって生成される異物に攻撃する武器の一種です。
免疫グロブリンとも呼ばれ、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEの5種類があります。
抗体は、感染がおこってからすぐに体内で作られるわけではなく、数日~数週間かかります。
たとえば、IgGよりIgMのほうが、早く作られます。
新型コロナウイルスの場合、発症から2週間程度で8割の方、3週間程度で全ての方に、抗体検査の陽性反応が出ると言われています。
この検査の価値は、個人個人に当てはめて考えるよりも、感染症の全体像を把握するために実施し、公衆衛生上の対策を立てる際に役立ちます。