夜尿症(おねしょ)

公開日:2021年2月24日

夜尿症とは?

夜、睡眠中に無意識で排尿してしまう症状のことです。

「夜尿症」と「おねしょ」という言葉は、ほぼ同じ意味で使われますが、主な定義は、5歳を過ぎて1ヵ月に1回以上の夜尿が3ヵ月以上続く場合を指します。
毎日の場合もあれば、1週間に1回以下の場合もあり、頻度はさまざまです。
基本的には排尿後は目が覚めることは少なく、排尿直後に目が覚める場合は治る時期が近いというサインになります。

主に5歳児の約15%、10歳児の約5%に夜尿がみられ、毎年15%のお子様が学年が上がると共に自然と改善するといわれています。
しかし、0.5〜数%程度は成人になっても治らないことがあります。
まずはご家庭でおこなえる対策を試していただき、症状が続く場合は生活指導などを通して治療していきます。
夜尿症は、治療しなかった場合に比べて治療を行うことで治癒率を2~3倍高めることが可能で、症状が出なくなるまでの期間も短縮できるといわれています。
また、夜尿と並行して「昼間尿失禁」または「昼間遺尿」と呼ばれるものもあります。

ある程度以上に尿がたまると膀胱が急に収縮して、強い尿意のためトイレに間に合わずに漏らしてしまうものです。
どちらの症状もあるケースでは、はじめに昼間尿失禁の治療をして、次に夜尿症の治療を行っていきます。

※当院は おねしょ卒業!プロジェクト に掲載されています。お子さまのおねしょがどのような状態にあるのかチェックしてみましょう。

夜尿症の原因

主な原因は夜間の尿量が多い「多尿型」、夜間の膀胱容量が小さい「膀胱型」、その両方が合わさった「混合型」の3パターンがあります。
夜間の尿量が多いこと、膀胱がうまくおしっこを貯蓄できないこと、睡眠障害、覚醒障害などが原因となります。

通常、夜間の睡眠中は尿の量を減らす「抗利尿ホルモン」の分泌が増加して、尿量が昼閒の60%程度に減少します。
そのため、眠っている間に作られる尿の量が膀胱にためられる量を超えても目を覚ますことができないときに夜尿が起こります。
また、自律神経の作用で、夜間は膀胱容量が昼間の1.5〜2倍に増加します。
しかし、この機能が未発達の場合、睡眠中の尿量が膀胱のキャパシティを超えて尿意が起こります。
この時、起きられないと夜尿が起こるのですが、子どもは生理的に睡眠が深いため発症しやすくなります。

そのほかにも、両親が夜尿症だった場合にその子どもが夜尿症になる頻度が高いとも言われていますが、明らかな原因遺伝子は見つかっていません。

多尿型膀胱容量は正常。
夜間尿量 > 膀胱容量 のとき発症します。
通常の夜間尿量の上限は6〜9歳で200ml、10歳で250mlが目安となります。
膀胱型夜間尿量は正常。
膀胱容量<夜間尿量 のとき発症します。
混合型多尿型と膀胱型を合体させたパターンです。
夜間尿量が多く、さらに膀胱容量も少ないのが特徴です。

夜尿症の対策と治療方法

排尿に関わる生理的調整が完成するのは、一般的に5〜6歳以降と言われており、その時期を過ぎても夜尿が続く場合を夜尿症と定義します。
なので、基本的に治療は小学校入学以降に行っていきます。
ご家庭でできる対策もあるため受診の前に、まずはご家庭で行える対策を一度試してみてはいかがでしょうか。

ご家庭でできる対策

対策① 夜中に無理に起こさない

夜間の入眠中は尿を濃くして尿量を減らす「抗利尿ホルモン」が多く分泌されます。
就寝中にトイレのために無理に起こすことは、抗利尿ホルモンの生理的な分泌に悪影響を与える可能性がありますので避けましょう。

対策② 夕方以降は水分摂取を控える

夜間尿量が増えるため、夕方以降の水分摂取は控えましょう。

対策③ 寒さ対策をおこなう

寒冷刺激は夜尿の原因となります。
お風呂上がりに湯冷めしないようにする、寝る時に靴下を履いたり暖かくして寝る、冷房の設定温度に注意する、など心がけましょう。

対策④ 日中のおしっこの我慢訓練をする

おしっこを我慢する練習によって、膀胱が大きくなります。
日中に尿意があっても可能な限り排尿を我慢させてみましょう。
無理をすると膀胱炎の原因になりますので、無理のない範囲でやることが大切です。
以上を実施しても改善しなかった場合は、夜尿記録をもとに病型を確認したうえで、病型にあった薬物治療を検討します。

夜尿の治療

一晩の尿量が通常は200cc以下ですが、250cc以上ある「多尿型」の場合は、尿を濃くして尿量を少なくする作用をもつ抗利尿ホルモン薬(内服薬と点鼻薬があります)を使用します。
膀胱が小さく、尿を蓄える力が弱い「膀胱型」に対しては、尿を多く膀胱に蓄えられるよう膀胱機能を安定させ、我慢尿量を増やす作用をもつ抗コリン薬(内服薬)を使用します。

その他、抗利尿ホルモン分泌を促す作用と抗コリン作用をもつ三環系抗うつ薬(内服薬)や、漢方薬を組み合わせて治療することもあります。
昼間尿失禁がある場合は、時間を決めて排尿を行い、膀胱容量を増やす治療も行います。

アラーム療法(夜尿アラーム)

薬物治療で十分な効果が得られない場合にアラーム療法を検討することがあります。
特殊な治療で当院では行えませんので、実施可能な病院をご紹介いたします。
夜尿アラームとは、下着に小さなセンサーがついた機械です。
これを装着して寝ると、センサーが尿で濡れた時にアラームが鳴ります。
アラームで起きることを繰り返すうちに、膀胱にためられる尿の量が増えていき、夜尿が改善されます。

予防・治療後の注意

日常生活で、コーヒーやお茶などカフェインを含む飲み物は、利尿作用があるためなるべく避けましょう。
昼間に規則正しくトイレへ行く、就寝前は水分の摂取を控えて必ずトイレにいくという習慣をつけて予防しましょう。

作成者:大森町駅前内科小児科クリニック医師